インドネシア共和国政府は、特許出願に関する法務大臣規則第6号(2026年)(以下「本規則」)を新たに施行しました。本規則は、知的財産総局(DGIP)における特許出願手続に関する制度を刷新するものであり、特許出願に関する手続的側面を包括的に規律する新たな枠組みを構築しています。
本規則は、インドネシアの特許行政における重要な進展を示すものであり、国家の知的財産制度の効率性、透明性、および法的確実性の向上に向けた政府の継続的な取り組みを反映しています。さらに、本規則は、2016年特許法(法律第13号)を改正する2024年法律第65号(第三次改正)を実施するための施行規則としての役割も担っています。
実務的観点から見ると、本規則はインドネシアにおいて特許ポートフォリオを管理する出願人および実務家にとって重要な手続上の改善および明確化を多数導入しています。特に、新たな規定は、出願手続、必要書類、ならびにDGIPにおける行政手続の各側面について具体的に規律しています。
インドネシアが引き続き技術投資およびイノベーション主導型の活動を積極的に受け入れている中で、これらの規制動向を理解することは、同国において効果的かつ適時に特許保護を取得するために不可欠です。
以下に、本規則の概要をご案内いたします:
- 出願に必要な最低限の情報および書類要件
本規則第2条は、特許出願の提出にあたり必要とされる最低限の情報を規定しています。その内容は以下のとおりです:
a. 出願書の日付(年・月・日)
b. 発明者の氏名、完全な住所および国籍
c. 出願人が法人でない場合における、出願人の氏名、完全な住所および国籍
d. 出願人が法人である場合における、出願人の名称および完全な住所
e. 代理人を通じて出願する場合における、代理人の氏名および完全な住所
f. 発明の名称
g. 優先権を主張する場合における、最初の出願国およびその出願日
h. 特許協力条約(PCT)に基づく出願である場合における、PCT番号および国際出願日
さらに、出願は以下の書類を添付する必要があります:
a. 発明の名称
b. 発明の詳細な説明(明細書)
c. 保護を求める範囲を定める請求項
d. 発明の要約(アブストラクト)
e. 発明の理解に必要な場合における図面
f. 登録された知的財産代理人を通じて出願する場合の委任状
g. 出願人が発明者でない場合における権利譲渡証書
h. 出願人が中小企業、教育機関、または政府の研究開発機関に該当する場合における、所轄当局が発行する証明書(※本要件は国内法人に限り適用)
i. 発明が微生物に関するものである場合における微生物寄託証明書
j. 発明が遺伝資源および/または伝統的知識に関連する場合における、その出所に関する出願人の声明
- 各セクションおよび配列表
a. 発明の属する技術分野
本発明が属する技術分野についての説明および解説。b. 発明の背景
本発明の理解、調査、および審査のために必要な、出願人が認識している技術的背景についての説明。
本セクションでは、当該技術分野における従来技術に関する文献に言及することができ、さらに既存技術と比較した本発明の技術的利点および有用性について説明することも可能です。c. 発明の概要本発明の実施形態およびその実施方法についての簡潔な説明。d. 図面の簡単な説明
図面を含む場合における、当該図面に関する事項の簡潔な説明。e. 発明の詳細な説明
本発明を実施するための少なくとも1つの方法についての完全な説明。必要に応じて図面を参照しながら説明することができ、特に発明の性質上、言葉のみでの説明が困難な場合には、産業上の利用可能性や実際の使用方法について明確に記載する必要があります。f. 配列表
該当する場合、国際基準に準拠した形式で作成された配列表を提出する必要があり、Portable Document Format(PDF)にて提出しなければなりません。
- 英語およびインドネシア語訳の提出義務
本規則第7条は、特許明細書が英語以外の外国語で作成されている場合、出願人は出願日から30日以内に英語およびインドネシア語の双方の翻訳文を提出しなければならないと規定しています。本提出期限の延長は認められていないため、出願人は期限内に必要な翻訳文を確実に提出することが強く求められます。
- 国内段階移行期限およびその延長
本規則第37条に基づき、特許協力条約(PCT)に基づいてインドネシアを指定した特許出願は、以下のいずれかの日から起算して31か月以内に、受理官庁としての大臣へ国内段階移行のために提出しなければなりません:
- 国際出願日
- 最先の優先日
当該31か月の期限を経過して提出された場合でも、出願人またはその代理人は、法務省における非税収入(PNBP)に関する現行規則に基づく所定の手数料を納付することにより、期限延長が認められる場合があります。
この延長は以下のとおり認められます:
- 国際出願日から起算した期限満了後、最大3か月の延長
- 最先の優先日から起算した期限満了後、最大12か月の延長
ただし、これらの延長期間を経過して出願された場合、当該出願は受理されません。
- 優先権主張出願の期限および延長
PCT出願と同様に、本規則第28条は、優先権を主張する特許出願について期限後の提出を認めています。
優先権を主張する特許出願は、優先日から12か月以内に提出しなければなりません。もっとも、この期間内に出願されなかった場合でも、期限経過後さらに4か月以内であれば出願が可能です。
ただし、この4か月の猶予期間内に出願する場合には、法務省における非税収入(PNBP)に関する規則に基づき、追加の政府手数料の支払いが必要となります。
なお、いかなる場合においても、出願人は優先日から16か月以内に優先権証明書を提出できる状態にある必要があります。
- 早期公開(加速公開)
現在の公開手続は従来と比較して既に迅速化されていますが、本規則により早期公開(加速公開)の申請が可能となっています。
当該申請は、出願日から最短3か月後に、所定の追加官費を支払うことにより行うことができます。ただし、優先権を伴う特許出願については、この早期公開制度は適用されません。なお、簡易特許(実用新案)については、公開期間自体が非常に短く、14日間とされています。
- 早期実体審査請求
実体審査の早期請求は、公開段階に入る前であっても、すべての方式要件書類が整っている場合に提出することが可能です。審査官は、公開期間終了後12か月以内に、拒絶または特許付与の判断を行うことが予定されています。もっとも、公開期間中に異議申立てがなされた場合には、審査官にはさらに最大18か月の追加期間が与えられ、最終判断を行うこととなります。
- 加速実体審査
本規則は、PPH(特許審査ハイウェイ)または地域的枠組み(例:ASPEC)を通じた加速実体審査についても規定しています。当該申請にあたり、出願人は以下の書類を提出する必要があります:
- 二国間協力に基づく加速実体審査の申請書
- クレーム対応表(Claims Correspondence Table)
- 協力対象国における実体審査結果の写し
- 当該審査結果において引用された先行技術文献の写し
- 協力対象国において特許可能と判断されたクレームの写し
- 関係法令に基づく所定の官費の支払い
- 実体再審査
本制度は、本規則における最も重要な特徴の一つであり、特許審判委員会への不服申立て(審判)に進む前に、出願人が利用可能な追加的手段を提供するものです。すべての実体再審査請求は審査官による再度の審査対象となり、請求日から12か月以内に判断が下されることとされています。
実体再審査は、以下の場合に請求することが可能です:
- 出願の拒絶に対する再審査
特許出願が拒絶された場合、出願人は、特に当該発明が特許要件を満たさないと判断された場合において、実体再審査(いわゆるセカンドレビュー)を請求することができます。当該請求にあたっては、出願番号、拒絶理由、発明者および出願人の情報、再審査請求の理由等を含む所定の申請書を提出しなければなりません。また、書面による説明および関連証拠を添付する必要があります。この請求は、拒絶通知日から9か月以内に行う必要があります。再審査の結果、特許要件を満たしていると判断された場合、当局は出願人に通知を行います。出願人はその後、通知受領日から3か月以内に応答する機会が与えられ、最終判断前に残存する問題点に対応することが可能です。
- 特許付与後の明細書・請求項・図面の補正
特許付与後、出願人は、明細書、請求項および/または図面の補正を目的として実体再審査を請求することができます。ただし、この再審査は以下のような限定的事項にのみ適用されます:
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- 翻訳誤りの修正
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- 不明確または曖昧な記載の明確化(※発明の範囲を拡張しない範囲に限る)
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- 編集上または誤記の訂正
請求にあたっては、特許番号、出願人・発明者情報、補正理由等を記載した申請書に加え、説明書、証拠書類、および必要に応じて委任状を提出する必要があります。本請求は、特許付与通知日から9か月以内に行わなければなりません。
- 編集上または誤記の訂正
- 特許付与決定に対する再審査
特許付与後、出願人は、明細書、請求項、要約および/または図面の変更を目的として、付与決定自体に対する実体再審査を請求することが可能です。ただし、これらの変更は発明の保護範囲を拡張しない範囲に限定されます。
請求には、特許番号、出願人・発明者情報、請求理由等を含む申請書のほか、以下の書類が必要となります:
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- 書面による説明
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- 証拠資料
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- 原特許証
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- 年金納付証明書
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- 必要に応じた委任状
本請求は、特許付与通知日から9か月以内に提出する必要があります。
- 必要に応じた委任状
- 出願の取下げに対する再審査
特許出願が(第54条および第55条に基づき)取下げられた場合であっても、出願人は当該取下げに対する実体再審査を請求することができます。請求には、出願番号、取下げ通知の詳細、出願人および発明者の情報、再審査請求の理由等を含む申請書を提出する必要があります。この請求は、取下げ日から2か月以内という非常に短い期間内に行う必要があります。
- みなし取下げに対する再審査
方式要件書類の未提出等の理由により、出願がみなし取下げとされた場合でも、再審査手続により当該出願を回復することが可能です。この場合の請求は、みなし取下げ通知日から9か月以内に行わなければなりません。
- 追加的な法的救済手段
本規則第131条は、再審査という形での追加的な法的救済手段について規定しています。具体的には、以下の決定に対して再審査を求めることが可能です:
- 審査後の出願の付与/拒絶(第73条)
- 早期審査後の出願の付与/拒絶(第81条)
- 簡易特許(実用新案)の付与/拒絶(第90条)
さらに、第131条第2項は、上記の決定に対して特許審判委員会へ不服申立てを行う場合の期限について、実体審査、早期実体審査、または再審査の決定日から9か月以内と定めています。
また、審判の結果に不服がある場合には、特許審判委員会の決定日から3か月以内に商事裁判所へ提訴することが可能です。
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当事務所はその卓越した実績により高く評価されており、Asia Business Law Journal主催の「Indonesia Law Firm Awards 2025」において「インドネシア最優秀ブティック法律事務所」および「IPエンフォースメント・ファーム」を受賞しています。また、WTR 1000(世界有数の商標専門家ランキング)においても「Recommended Firm 2024 — Indonesia」として掲載されています。
詳細については、以下のウェブサイトをご覧ください:www.affa.co.id







